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働者を避難させるのが精一杯で、その後避難者を安全な場所に集め、外出者等を確認するも正確な人数は判明せず、人命検索に苦慮した。
しかし、幸いに気象状況にも恵まれ、木造家屋密集地にもかかわらず、また包囲隊形も比較的スムーズに完了し、焼損を最小限で阻止したものである。

 

まとめ
寄宿舎については、火災が発生した場合大きな人的被害が生じる危険性が高い。この火災は建築関係労働者の寄宿舎で、労働の疲れと、翌日は日曜日でもあり、遅くまで飲酒、日頃のストレスを解消し故郷を偲び就寝したものと思われる。その深夜に発生、消防機関への通報も遅れ、当日の宿泊者四一名の内、不幸にして二名の焼死者が生じた。
さらには、今なお焼死者は自称A五〇才、B四六才としか判明していない。
このような寄宿舎は、日々寄宿人数が異なり、労働者は身分を明らかにしない傾向にあるため、発災時の逃げ遅れ、また避難者の確認等に困難を極めるのが実情である。
この寄宿舎は、消防用設備や防火管理者等は法的に不要であるが、消火器の設置すら見られず、防災意識の稀薄さがうかがえる。これらを含めパトロール等で警備、予防両面から実態調査に努めるとともに防火指導の徹底を強く推し進めることが不可欠である。
(上原勲)

 

救急・救助

黒曜石採掘坑内で作業員三名生埋め
下請訪町消防本部(長野)

 

はじめに
下諏訪町は、長野県のほぼ中央に位置し、諏訪湖の北岸に広がり、正面に遠く富士山を望む景勝地である。古くは中山道と甲州道の交わる温泉宿場町として、また諏訪大社の門前町として栄え、今日もその面影を色濃く残している。日本で最も古い伝統のある天下の奇祭「御柱祭」の地としても知られている。
消防体制は、一本部、一署、職員数三二名と小規模ながら管轄面積六六・九k?u、人口二四、七三二人の地域住民の生命財産を守っている。
ここに紹介する事例は、市街地から一五?qの遠隔地で発生した、黒曜石採掘坑内落盤事故の救助概要である。

 

一 事故概要
(一)日発生日時
平成八年二月一六日 九時四五分頃
(二)発生場所
下諏訪町字東俣一〇六一八−一七
(三)覚知時分
一〇時二二分
(四)現場到着時分
救急隊 一〇時四五分
救助隊一〇時四八分
(五)救出時分
A(二四歳 十七日死亡)一四時五五分
B(五四歳 死亡)一七時〇七分
C(五一歳 死亡)一八時四六分
(六)出場車両・人員
下諏訪町消防本部
指揮者 一台
救助工作車 一台
救急車 二台
ポンプ車 一台
広報車 一台
資材搬送車 一台
岡谷市消防本部 職員二四名
救助工作車 一台
広報車 二台
資材搬送車 三台
諏訪市消防本部職員 一七名
指揮車 二台
救助工作車 一台
広報車 二台
下諏訪町消防団 団員六二名
下諏訪町役場 職員五〇名

 

二 事故発生状況
黒曜石採掘坑内で作業員六名により、土留工に使用する唐松材を高さ四〇mの縦坑最上部に滑車を取付け、ワイヤーロープで吊り上げ中、滑車を支えていた天井部の土留工材、土砂が突然崩落し付近にいた三名が生埋めとなった。

 

 

 

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